【僕と彼女と彼女の生きる道】再放送・第5話
#5 娘のために
徹朗(草なぎ剛)はマミ(山口紗弥加)に誘われて居酒屋へ。
「相談って何?」
「別にないです」
3年前の一夜のことがあるだけに、徹朗は急に身がまえた。
「大丈夫ですよ。困らせようなんて思ってないですから」
マミはいたずらっぽく笑ったが、徹朗は落ちつかなかった。
徹朗は凛(美山加恋)が上ばきで登校しようとするのに気づいた。
「はき替えるの、忘れたのか?」
「違います。クツがなくなりました」
徹朗は深刻には考えなかったが、その夜、凛は泣きながら打ち明けた。
「体操袋もなくなっちゃいました」
母親可奈子のお手製だけに凛の落ち込みようは大きかった。
「先生にちゃんと言うんだぞ。お父さん、なるべく早く帰ってくるから」
徹朗は井上部長(小日向文世)から誘われた接待を断った。井上は代わりに岸本(要 潤)に声をかけた。
これまでの徹朗なら心穏やかではいられなかったはずだが、いまは仕事よりも凛のことが気がかりだ。
凛はどうしても担任に伝えられなかった。元気のない様子にゆら(小雪)はある予感がした。
「イジメられてるんじゃないでしょうか?」
「まさか!」
徹朗は信じられなかったが、ゆらに勧められて連絡帳に靴と体操袋を探してくれるよう書いてみた。
徹朗が残業していると、ゆらから連絡がはいった。
「ウチに来ているんです」
下敷きまでなくなって、かなりショックを受けているという。徹朗がゆらのマンションに迎えにいくと、凛はすでに寝てしまっていた。
「体操袋がなくなって、お母さんへの思いが一気にあふれたみたいです」
徹朗の前ではほとんど母親のことを口にしなかった凛だが、やはり会いたい気持ちを我慢していたのだ。
翌朝、凛が嘔吐した。
「大丈夫か?」
徹朗は病院につれていってから出社するつもりでいたが、結局丸一日つぶれてしまった。
「学校にいくのが嫌みたいなんだ」
ゆらは担任教師と話しあうことを勧めてくれた。
「怠慢な先生だったら、どうするんですか」
ためらっていた徹朗はゆらのその一言で決心した。
「犯人探しをするつもりはありませんから」
担任の石田(浅野和之)は自信たっぷりに説明したが、徹朗は釈然としなかった。
そして凛の不登校のせいで、徹朗の仕事にも支障がでてきた。得意先には遅れる。夜の接待には出れない。ついに井上が声を荒らげた。
「それじゃ仕事にならないだろ」
「勝手言って本当にすみません」
徹朗は頭を下げるしかなかった。
日曜日に美奈子(長山藍子)が来てくれた。
「凛ちゃん、上手ねえ」
料理を手伝う凛が笑顔になった。ひさしぶりのなごやかな空気をチャイムの音が破った。
「離婚したって言ったきり、何の連絡もよこさないで」
義朗(大杉漣)だった。定年退職したというのに、あいかわらずのスーツにネクタイ姿。
「凛、公園で遊んでおいで」
「はい」
そして徹朗、美奈子、義朗の3人は向かいあった。
「どうして亭主と子供をおいて、好き勝手にパリなんかに行けるんだ
義朗はすべての責任は可奈子にあるものと決めつけた。美奈子は
「夫婦のことは当人にしかわからないことも」と言いかけて途中で言葉をのみこんだ。
義朗の怒りのほこ先は徹朗にも向けられた。
「一家の恥だぞ」。
さらに凛の不登校についても
「甘やかせてきたからだろう。どうゆう育て方をしてきたんだ」とはき捨てた。
徹朗は再び石田をたずねた。しかし石田は
「これ以上、私に何をしろと言うんですか」
と聞く耳をもたない。仕方なく徹朗が校長に経緯を打ち明けていると、あわててやって来た石田がとんでもないことを言いだした。
「盗まれたふりをしている可能性もあるでしょ。おたくはいろいろと問題がおありだから」
母親がいなくなった寂しさから、凛が嘘をついて徹朗の関心をひこうとしているというのだ。
徹朗は怒りがこみあげた。
「凛は嘘なんかつきません!。本気でやってください。それまで毎日でも学校に来ますから」
徹朗の気迫に石田はたじろいだ。校長は再調査を約束してくれたが、石田は2人きりになると徹朗につっかかってきた。
「校長と話すときは必ず私を通してください!」
徹朗はつい笑ってしまった。生徒のことよりも、自分のメンツだけを気にする姿は、ついこの前までの自分とウリ二つだったからだ。
学校からの帰り道、凛の体操袋を見つけた。
拾った誰かが木の枝にひっかけてくれたらしい。
徹朗はきれいに洗濯すると、ゆらに勉強を教えてもらっていた凛の前にさしだした。
「あっ!」
凛の表情がパッと輝いた。
「よかったね」
そしてゆらと一緒に喜ぶ凛を見ていた徹朗は、ある決意をかためた─。
引用:番組HPより