【僕と彼女と彼女の生きる道】再放送・第7話
#7 元妻の復讐
井上部長(小日向文世)が飛び下り自殺を図った。一命はとりとめたが、意識が戻らない。遺書はなかったが、常務になれなかったことが原因なのは間違いない。
徹朗(草なぎ剛)は自分を責めた。昨夜義朗(大杉漣)の面会時間を気にするあまり、いつもと違う井上の様子を見逃してしまった。
「親父のせいだからな。どうしてくれるんだよ!」
徹朗はいき場のない怒りと悲しみを義朗にぶつけた。
ゆら(小雪)も心配してくれた。そんな彼女がいれてくれた温かいココア。「おいしい」
徹朗の表情が少し和らいだ。翌朝から徹朗は野菜や果物の特製ジュースを作りはじめた。
凛(美山加恋)がうれしそうに見ている。「乾杯!」。徹朗は誰かのためにしてあげることの喜びを感じた。
井上が意識を取り戻した。
「お会いすると言ってます」
断られるのを覚悟していたが、付き添っていた井上の妻は病室に入れてくれた。ベッドの上で井上はぼんやり窓の外を見ていた。
「ホントにいい天気だ」
井上は別人のように穏やかな表情をしていた。
「すべてのことが遠い昔のことに思えるよ」
井上には職場に戻るつもりはなかった。
「奥さんに怒られちゃったよ。息子と娘にも」
井上はつかの間泣いたが、徹朗に向き直ったときには笑みを浮かべていた。
「新しい仕事も子供のこともうまくいくといいな。おまえならきっとうまくいく」
「はい」
会社人間だった井上はようやく家族との絆に気づいた。徹朗は安心して病室をあとにした。
「井上部長、もう大丈夫です」
ふと立ち寄ったスーパーでゆらに出会った。
「よかった」
ゆらは結婚パーティーの帰りとあってドレスアップしていた。ゆらと立ち話していると呼びかけられた。美奈子(長山藍子)だった。
「失礼します」
ゆらが立ち去ると、美奈子は徹朗の顔色をうかがうように言った。
「これからどなたかとおつきあいすることがあっても、凛ちゃんのことだけはちゃんと考えてあげてね」
美奈子がゆらをどんなふうに見ているかが分かった。
「そういうことは全然考えてませんから」
徹朗は即座にこたえた。
「お世話になりました」
徹朗にも職場を去る日がきた。居酒屋での送別会にきてくれたのはマミ(山口紗弥加)だけ。
徹朗の携帯電話が鳴った。義朗からだった。知りあいの融資話を聞いてもらいたいという。
「俺、きょう銀行を辞めたんだよ」
義朗は激怒した。
「どうして俺に断りもなしに辞めたりするんだ。誰がおまえを立派に育てたと思ってる。なんとか言ったらどうなんだ!」
なにも言う気になれない徹朗は電話をきった。
徹朗は珍しく酔いつぶれた。そこへ亜希(田村たがめ)と映画を見てきたゆらが出くわした。
「私、知り合いのものです」
いっこうに起きる気配がない。
「せっかくのデートなのに」
マミに任せておけばいい。
「じゃあ、失礼します」
ゆらは気になりつつも店を出た。
結局マミが徹朗を自宅まで送り届けた。
「お父さん、寝てるんですか?」
初めて目にする父親の姿に凛は驚いたようだ。
「お酒をちょっと飲みすぎちゃったの」
マミは徹朗をベッドに寝かすと帰っていった。
同じころ、ゆらはベッドの上で眠れない一夜をむかえていた。自分でもなにが原因なのか、分からなかった。
「一緒にベッドまで運んでくれたのか。ゴメンな」
翌朝Yシャツ姿で目覚めた徹朗が凛とジュースを作っていると、新しい職場となる信用金庫から電話がかかってきた。
「では、うかがいますから」。
呼び出された徹朗に人事担当者から、思いもかけない事実が伝えられた—。
引用:番組HPより